シュペルロンガ浜での二重の出逢い
ローベルト・ゲルンハルト (1937 - 2006)
日はもう傾いていた。
浜辺は広くすいていた。
私の影は前方斜めに伸び、
君の影を追っていた。
君は見知らぬ女性。
君と君の影とが素早く近づく。
君の影は暗く君の肌は白く、
そうして二つは砂の上に来る。
とても美人だし裸も同然
君は僕の前を走って行く。
すると影はもう二つではなくなり、
正確に重なり合う。
僕と影とは君たちをゆっくり検分した。
君と影とは向きを変えなかった。
君と影とは無言で走り去り、
僕と影とのうちの、一人が声を上げた。「アー」。
Roberd Gernhardt (1937 - 2006)
Doppelte Begegnung am Strand von Sperlonga
シュペルロンガはイタリアの浜辺の保養地。この詩はフォーク調に曲が付けられてもいます。高校の国語教科書に鑑賞対象として出てもいるようで、ドイツでは有名なのでしょう。
結局男の思いは実らず女性に振り向いてもらえませんでした。テレビコマーシャルの映像風だと当初軽く考えていたのですが、「......ボードレールの『a une passante (一人の女通行人)』と比べてみよ」という教科書の課題を見たりすると、そう言えばそうだ、と思わせます。
« 1月の干し物ロープ上の悲しみ | トップページ | 砂の道 »
「ドイツ詩」カテゴリの記事
- 浄められた秋(2018.12.21)
- ベルリン、お前はドイツのドイツの女(2018.09.21)
- シュペルロンガ浜での二重の出逢い(2018.05.25)
- 1月の干し物ロープ上の悲しみ(2018.04.10)
- 盲目の斑点(2018.01.23)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/566114/66757266
この記事へのトラックバック一覧です: シュペルロンガ浜での二重の出逢い:
コメント