« 2017年9月 | トップページ | 2017年11月 »

2017年10月

2017年10月31日 (火)

苦痛よ、私はあなたを憎む

サビーヌ・シコー (1913 - 1928)



苦しむという名誉

伯爵夫人アナ・ドゥ・ノアイユ

苦痛よ、私はあなたを憎む!ああ、どれほどあなたを憎むことか!

痛み、私はあなたを嫌悪する。怖い、あなたの腹黒い見張り、あなたの通り過ぎた後、体と心に残るおののきが恐ろしい。

あなたの後に、時々はあなたに先んじて、言葉では表せないこうした恐ろしい感じを抱く。

細かい歯を持った目に見えない動物がお人好しの私の健康体へやって来てもぐらの様に私の体を掘り返したり、噛んだり、穴を開けたりする ー 空は真っ青、お日様は穏やかに、水は清らかだと言うのに!

ああ、「苦しむという名誉」ですって!

干からびた唇をした苦しみ。人が何と言おうと、どんな仮面を被ろうと、痛み苦しみは醜い。

雷に打たれる様な、又はしつこい、又は両方でもある苦痛。

私はあなたを罪として見なす。輝く果実の中や緑の葉叢の中で、開け放った窓へ合図を送る庭園の中で、いきいきと優しく生きることへの攻撃と見なす。

アヒル達が池へ向かって陽気に走る。

鳩達が町の上、広がりを狂い飛ぶ。

泳ぎ走り吹く風と闘う、

これは私の権利ではないのか、人生がそこにあるのだから。見掛けは単純に.......そう見掛けはね!

ある日、痛み苦しみという名のあなたと出会うと、

身体は打ち負かされ、精神は弛緩する。

或いはあなたと関わったという名誉を信じるか?

そして言うのだ、苦しむのは多分偉大なことだなどと。

偉大だと?誰が確かなものか、それにそれがどうした。

病名が何であれ、重いか軽いかに関わらず、

無垢で強靭なこの私の中に、明るい顔の喜びがもはや存在しないのであれば、偉大だなどと....。

あなたを高めるためにあなたを讃えて、

詩人は自分自身に嘘をついている。.....私はあなたを憎悪する。

あなたは卑怯だ、不公正だ、犯罪者だ、最悪の裏切りにも手を貸す!私は知っている。今後あなたが倦むことなき敵になるのを。今後は、リラの香りの満ちた穏やかな公園に行っても、砂地や気狂い草が生い茂ったりの秘密の小道に行っても、もはやあなたからは逃れられぬ、あなたを忘れられぬ、ということを。

小さなエプロンをつけて可愛い私の無知。

裸足で袖なし上着、帽子無しの無知。

季節を通して汚れの無かった無知の笑い声が響き渡る。

私の無知、それはあなたと関わる以前のもの。

人に何をされたの、あなたは何をしたの、老いた苦しみよ?

私にとって世界の意味を変えてしまう様な事をあなたは許すのですか?

私はあなたが大嫌いだ。湯気で曇った鏡の奥に映るあの金髪の少女、彼女を殺したあなたが.....。

ほかの少女がいまはいる、青白くて、あんなに違ってしまった!

この少女二人の間にいつもあなたを認めることなんてことに、あたしは馴染めないし馴染みたくもない。

不吉の魔王、若い妖精たちがどんなに人助けの力を振るっても無駄。

昔々....昔々....声は哀れにも押し殺された!

声を生き返らせてくれるのは誰?あの泉の声を私に返してくれるのは誰?妖精の中の妖精、どんな病も治してくれるというあの泉。

Sabine Sicaud (1913 - 1928)

Douleur,je vous deteste

2017年10月11日 (水)

診察にいらしたお医者様方へ

サビーヌ・シコー  (1913 - 1928)



「もうできません。もう無理です。見れば分かるでしょうに......。

わたしこれだけしか出来ない。

先生方は私を診察する、でも何もなさらない。

先生方は今日も、何度も前にそうだったのと同じね、私は頑張れるし病気と闘うべきだとおっしゃる。

ご存じないの。私貧弱だけど全力を出しました、わたし。

乏しいけれど勇気を奮いました。でも今私の手に残ったのは努力中折れ、努力騙され。これがどれ程重荷になっているか、知っていて下されば!

何故理解なさらないの?オリーブの林の中で

ナザレのイエズスは泣いた、でも私の落ちた闇の方が彼を取り巻いたのより、もっともっと重いわ。

黒い、みんな醜い、惨め、反吐が出そう、不吉........。

先生方は軽い気持ちで私に微笑むけど無駄よ。だれが頼りになんかするものですか。

明日になればと約束なさるけど、仕草もヘマなら声も嘘声です。明日ですって!救いの手が要るのは今なの、すぐよ。

もう限界......。

耐えられのはこれが全て。これでみんな。

もう駄目。もう無理。もう望まない.......。

私が限界だということを、先生方は無情にも理解できなかったし、理解しようともしなかった。

放置された私、自分の苦しみを自分で苦しんだ。

せめて.........雷に撃たれるみたいに死なせて。

ナイフの一突きでも良い。殴り殺されるのも良い。

眠るように永遠に眠れるファキールの毒はどう?金緑色の。

こんなに苦しんで、夜も昼もこんなに苦しんで、

だから痛みが忘れられるなら、何でもい。」

Sabine Sicaud (1913 - 1928)

Aux medecins qui viennent me voir

サビーヌの死後30年が経った1958年、彼女の未刊行の作品を中心とした『サビーヌ・シコー詩集』が出版されました。彼女の母親と一家とも親しかった文芸評論家フランソワ・ミルピエールの二人が中心になって原稿を整えたものです。

詩集は3部に分かれ、全部で52篇、うち40篇の初出作品を含みます。(1)「子供時代の詩」14篇(2)「道シリーズ」18篇(3)病の苦痛を訴える「痛みよ、私はお前を憎む」12篇(4)ノートに残された未完成の詩稿から成ります。

没後詩集の出版を契機にようやく彼女の作品が注目される様になり、様々なインターネットサイトにも取り上げられています。フランス語の読める方であれば簡単に情報が得られます。

私がサビーヌを知ったのはアマゾンのKindle版フランス名詩選「フランスの名詩一万篇 Collection de poemes; les 10,000 meilleurs ..........」によってでした。わずか15歳でこの世を去り、しかも名詩選に採録される様な質の高い作品を残し、肉体の苦痛というこれ迄軽視されてきた主題に正面から取り組んだ少女詩人がいたのを初めて知りました。

もっと広く知られても良い詩人です。

« 2017年9月 | トップページ | 2017年11月 »