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2016年9月 5日 (月)

五月

エーリッヒ・ケストナー

DER MAI

Erich Kaestner 1899 - 1974

着込んだ礼服は陽気な放蕩者のそれ、

ほっそりした手には花束の杓、

五月が、カレンダーのモーツァルトが、やって来る、

馬車に乗り、国中に愛嬌を振りまきながら。

花盛り、五月はただ合図するだけだ。

合図する、そして満開の林を駆け抜ける。

ヤマガラが前もって愛想を言い、そしてウソが続く。

それからクジャク蝶がヒラヒラと舞い込む。

柵の向こうの林檎の木は赤みを帯びた。

白樺は緑色の会釈を送る。

ツグミがその小さなフルートで、演奏するのは、

シンフォニー「幸せ」のスケルツォ楽章。

馬車はパステルの息吹の中を通り抜ける。

僕等は帽子を脱いで挨拶。馬車は通り過ぎる。

時間はリラ色の波の中に沈む。

ああ、次の陽気な五月まで一年も待たされるなんて!

メランコリーと喜びは本当は姉妹なのだ。

枝々から降る花の雪。

脈拍の一打ちごとに今日は昨日へと移り行く。

幸せで胸が痛むことも有る。五月がそうだ。

五月が僕らに会釈をして叫んでいる。「又来ますね!」

青空はゆっくりと日暮の黄金色に色を変える。

五月が丘に挨拶し、リラに手を振る。

笑っている。笑っている。そして馬車は駆け抜ける。

DER MAI

Erich Kaestner 1899 - 1974

ケストナーはオーストリアの詩人・劇作家。児童文学家としても有名です。詩の方では、ユーモア豊かな作品で知られています。ドイツの春は遅く、3月は冬の続き、4月は春と冬の中間で雨降りの喜悦ですから、春の訪れが実感できるのは5月です。それで5月は飾り立てたお洒落な月として描かれています。

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