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2016年9月 7日 (水)

恋愛という事実

エーリッヒ・ケストナー

二人はもう8年も交際している

(交際は順調であったと言い得る)

その愛が突然消えうせてしまった。

他人で言えばステッキや帽子が無くなる様に。

悲しくなった二人は陽気にお互いをだましあい、

キスして何事も無かったかの様に、

見詰め合ったが、その先どうして良いのか分からない。

ついに彼女は泣き出して、男は立ちすくむばかり。

窓から船へ合図もできるそんな場所。

もう⒋時15分だからと彼は言いだす

どこかでコーヒーでも飲む時刻。

隣りでは誰かがピアノのお稽古中。

二人は土地で一番小さいカフェに入った

そしてめいめいカップをかき混ぜた。

夕方になっても二人は相変わらずそこにいた。

座っているのは彼らだけ、一言も口をきかず

そしてもう二人には分からなくなっていた。

Sachliche Romanze

Erich Kaestner 1899 - 1974

とりわけおかしいのが、男が「もう4時15分だからコーヒーの時間だよ」と言い出す箇所です。女との関係や自分の生活史が崩れてゆく最中、困惑して縋ったのが習慣だったという所が何ともおかしい。

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