« 日曜日 | トップページ | 私の或る一日 »

2016年4月16日 (土)

ル・マンシー(輿椅子)

ルコント・ド・リール (1818 - 1894)

ル・マンシー(輿椅子)

明るいモスリンの瑞々しい雲の下、

毎日曜日朝

君は藤のマンシー(輿椅子)に乗って町へ来た、

丘の坂道を通って。

教会の鐘がせわしなく鳴って、

海風が砂糖キビの茎を揺すっていた。

サヴァンナ風に尖った黄金の雹の様に、

太陽の火はピチピチはぜていた。

腕輪を手首に、くるぶしには足環、

そして巻き髪に黄色いスカーフ、

そんな身なりの原住民が二人、献身的同伴者、

マニラ茣蓙付君のベッドを担いでいた。

痩せて神経の浮き出た脛を折り曲げて、歌いながら、

白いガウンを着てしなやかに、

竹竿を肩に乗せそして両手を腰にあてがい、

担ぎ手は池に沿って進んで行く。

大通りと一段下がったベランダ沿いでは

混血の年寄りが煙草をふかし、

陽気な黒人の一団がマダガスカル・ボーブルの響きで

一座を賑わしていた。

軽やかな大気にはタマリンドの香りが漂い

輝くうねりの上方

沖合いでは鳥たちが巨大な軌跡を描いて、

海霧の中へ跳躍していた。

ところで君は皮サンダルから足を脱いで

マンシーの縁でぶらぶらさせていた。

黒く密生した樹林や、君の唇ほどには赤くない

実をつけるライチ果樹の中では

君の足はバラだった。

ところで群青と緋色に彩られた

花のような羽の蝶が一匹

ひととき君の繊細な肌に身を休めては

そこに色を残してゆくこともあった。

薄い亜麻の日除け越しに、

君の髪束ねが枕を金色に染めているのが見えた。

そして半ば閉じられ、眠った振りのまつげの下に

濃いアメジスト色の君の美しい目が見えていた。

この様に君は麗しい朝ごとに

山から大ミサへ来たのだった、

君の無邪気な優雅さとバラ色の青春の中

君のヒンドゥーのリズミカルな足取りに乗って

今君は、我が海岸の粗い砂の中

はまむぎ草と波の響きの下、

僕の親しかった死者とともに、眠っている

ああ、僕の最初の夢の魅惑の人よ!

Leconte de Lisle (1818 - 1894)

Le Manchy

詩人はレユニオン島生れ。作中の君は詩人の従姉妹で初恋の人だった。

こういう作品を読むと植民地主義だとか現地人差別だとか言う人が昔は多かったのですが、近頃はようやく当時の基準と今の基準の違う事が理解されるようになったのは喜ばしいことです。今の価値観で昔を裁いてはいけません。

南国の海の風が爽やかに香っていて、色鮮やかさが目に浮かびます。それだけに最後の節の白黒で冷たい世界が鋭く対比され、傑作です。

« 日曜日 | トップページ | 私の或る一日 »

フランス詩」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/566114/63494913

この記事へのトラックバック一覧です: ル・マンシー(輿椅子):

« 日曜日 | トップページ | 私の或る一日 »